1月の30日にキリスト者共同体の司祭をしておられる小林直生先生の講演会に出かけた。キリスト者共同体というのは、20世紀初頭に人智学運動を始めたルドルフ・シュタイナーという思想家が、キリスト教を信仰している人智学徒のために作ったグループだ。内容は、ドイツあるいはヨーロッパにおける人智学運動の現状を、いくつかのテーマに分けて話された。

面白かったのが、人智学運動がブルジョワ化してしまって一般大衆から人気を失い、新しい参加者が少なくなって高齢化しているという話と、日本でも関心が高まりつつあるべーシック・インカムの話だった。

人智学のブルジョワ化というのは次のようなことだ。

シュタイナーは人間の自由と霊性の問題を、社会問題と結びつけようとして人智学運動をはじめた。今風にいえば、宗教団体とは一線を画したスピリチュアル思想と社会問題を結びつけることをしようとした。人間のスピリチュアルな部分を、一切の権威主義的なものから解放しようとした。日本でいえば、出家して厳しい戒律を守り修行をしなければ悟りを得ることはできないと考えた仏教教団がはびこる中で、「いや、念仏を唱えれば悟りを得られる。教団も不要」と唱えた浄土系の仏教者みたいなものだ。

で、本来は自由を求めたのが人智学であったにもかかわらず、人智学徒は「テレビを見てはいけない」「化繊の服は着てはいけない」「肉は食べてはいけない」「化学調味料・食品添加物の入った食事はだめだ」「機械を通した音楽はだめだ」「子供にキャラクターものやプラスチックのおもちゃを与えてはいけない」「子供にはシュタイナー教育を受けさせなければいけない」・・・といった戒律をたくさんつくって、出家者集団みたいになったわけだ。ためしにネットで「シュタイナー教育」のキーワードでホームページを検索してみると、そういう規則でがんじがらめになっている人々の文章がたくさんでてくる。

霊的な感覚を磨くのに、菜食にしたり白い服をきたり、天然染料で染めた服をきたりするのは効果的なことなのだが、それにこだわると、本来は精神の自由を求める思想が、精神を縛る思想になってしまう。これが人智学運動のブルジョワ化ということだ。

人智学のブルジョワ化は日本でも同じことで、シュタイナー教育が盛んになったり、シュタイナーの社会思想が大きな影響を与えているベーシックインカムに関心が高まったり、時代はシュタイナーが唱えた思想を求めているのに、人智学の講習会などはいまいち盛り上がりに欠け、参加者が高齢化している。

ベーシック・インカムについては次回に書こう。

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