『心療内科医のメルヘン・セラピー』その12004/02/15

『心療内科医のメルヘン・セラピー』(講談社)という本を読んだ。著者の中川晶先生はいろいろな心理療法の流派の効果を研究している心療内科医だ。昨年中川先生の講演を聴いたが、大阪生まれで落語家みたいな話し方と、ひとつの流派にとらわれない広い観点からの話に大いに感激した。この本も漫談調に書かれていながら、心理療法の核心部分と実際の治療に結びつくような11話のメルヘンが書かれている。読者の知性が試されるような鋭い本だ。

中川先生の師匠の故頼藤和寛先生や、その親友である野田俊作先生の文章がとても好きで、目についたら欠かさず読んでいる。先生方の文章を読んでいて分かったのは、心理療法って結局は宗教の構造と同じだということだ。つまり人間の精神についてある形而上学的概念(各心理療法の流派の基礎理論)を設定し、セラピスト(宗教家)はそれにもとづいて人間を分析したり操作したりする。患者は自分にあった宗教(治療法)を選択し、それを信仰すれば救われるし(治療効果がある)、信仰なければ救われない(治療効果がない)。このあたりが本来の医学とは違うんだな。科学的とはいえなくて、心理療法は、中国医学なんかの治療構造と同じなんだな。

ところが中途半端な心理療法の専門家の文章を読んでいると、そのことが分かっていなくて、じぶんたちは内科医や外科医のような科学的な考え方にもとづく治療を行っていると信じているようだ。このあたりも宗教家と同じ発想だな。

頼藤先生の愛弟子だった中川先生も心理療法が一種の宗教と同じ構造という前提に立って治療しているらしく、この本の「はじめに」と終章では心理療法の欺瞞性と治療効果について、結構詳しく書いている。素人向けの本にそんなこと書いていいのか?って心配になるほどだ。

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