『心療内科医のメルヘン・セラピー』その32004/02/24

『心療内科医のメルヘン・セラピー』の14ページで、中川先生は次のような記述をしている。

これまでは心理治療者というのは専門家という枠組みのなかで、相談者のストーリーを聞くとそのなかから問題の核心を探り出し、まるで優秀な外科医がメスで病巣をえぐり出すように問題を解決してあげるというのが彼らのやり方でした。

これはおそらく精神分析などを念頭においているのであろう。人間の心を「外科医がメスで病巣をえぐり出す」ことができるなんていうのは、心理臨床家自身の心の投影にすぎない。だって外科医がメスでえぐり出す対象に実体はあるのだが、心の実体は観察できない。観察できないものにさもあるかのような概念をつけるのは、その人の心理的投影にすぎない。

たとえばフロイトがいうような無意識・前意識・意識、イド・自我・超自我、という概念は科学的に証明できないものだ。たんなる仮説構成体にすぎない。それは宗教教義と構造的にはなんら変わらない。

インド仏教には伝統的なアートマン説を取り込んだ唯識派の根本概念のアラヤ識や、如来蔵思想の仏性などという概念がある。これは意識の形而上学的実体なのだが、こういうものを持ち出してきてもそれが科学的に証明できるものではない。先のフロイトの概念はこういったものとなんら変わりはないではないか?

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