『遊行と巡礼』 五来重著2004/05/28

昼休みに古本屋に行った。本日の収穫は『遊行と巡礼』(角川選書 五来重著)だ。購入価格は300円。

五来先生は大学時代の恩師の一人だ。日本に宗教民族学の基礎を作った一人で、山岳宗教が専門だった。日本仏教学の研究対象は、教理や寺院・教団の研究が主だ。昔のお坊さんは、いまでいうと国立大学の教員や公務員に相当するような職業で、従来の日本仏教学はそういった人たちの業績を研究するのが主だったのである。ところが五来先生の研究の方向性はそういったものと全く違っていた。日本に仏教文化を大きく花開かせたのは、僧侶たちの業績以上に彼らの仕事を支えた庶民の宗教者たちの宗教活動があったからだというのが、五来先生の研究上の信念だった。

私はその研究姿勢に感銘を受けて、1年間だけど五来先生の授業を受けた。五来先生は歴史学者だけあって、非常に記憶力と分析力があって頭の回転が速い。聴講するだけでも大変だった。先生は当時80才近かったと思うが、読んだ本や資料のどこに何が書いてあるかほとんど覚えていて、それが有機的に繋げることができる、驚異的な思考力だった。かといって、書斎に収まっていた人ではなく、みずからの足で日本全国のの史跡を調査したり、修験者となって入峯修行をしたりしていた根っからのフィールド・ワーカーだった。

先生はおおらかで学者然としておらず、非常に人気があった。フランス人女性の受講生までいた。私も先生の研究姿勢とその業績に深く感動し、いろんなかたちで影響を受けている。

『遊行と巡礼』という本は五来先生の研究の一端を一般の人向けに書いた本だ。修験道やお遍路なんかに興味のある人はおすすめ。目次を記しておこう。

  第1章 歩く宗教
  第2章 巡る宗教
  第3章 西国巡礼の成立
  第4章 四国遍路と辺路信仰
  第5章 紀伊の辺路と熊野詣

研究分野は全く違うが、万葉学者で著名な犬養孝先生の研究姿勢と似ていると思う。犬養先生も万葉集が読まれた場所をひとつひとつあるいて研究の礎とされ、多くの万葉集愛好家を育てられた。

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