名人芸 -多賀大社フォーラム感想1-2006/09/07

今回の書き込みはプロもくしくは学生向けであり、考えることがあってわざとわかりにくく書いているのでご容赦を。

9月の2日から3日にかけて滋賀県の多賀神社へ、多賀大社フォーラムという鍼灸の研修会に行って来た。プログラムは後援している六然社のHPある。どの演題も興味があったので、1日治療院を休診にして、いそいそと出かけていった。どれも内容も密度も高く大変勉強になった。はっきり言って安すぎて恐縮したくらいだ。

演目で一番聞きたかったのは2日の南谷旺伯先生の散鍼の講義だった。南谷先生は、昭和の名鍼灸師のひとりとして名高い井上恵理先生の直弟子である。散鍼のやり方にはいろいろ流儀があるが、井上先生の系統のは見たことがなくて、以前から見たかった。

鍼灸の流儀にはいろいろあって、それは人間観から診察方法、具体的な刺し方にまでおよぶ。時代々々によっての流行なんてのもある。当院は中医系の古流派をベースにしており、鍼を刺す時の姿勢・身体操作の基本は中国武術の身体操作方がベースにある。だから患者さんの体を鍼で刺激する方法は中国的である(ただし学院派の荒っぽいやり方とは全然違う)。いろいろ工夫して、日本人に合うように改良しているが改善の余地はたくさんある。そこで最近気になっているのが超浅刺と散鍼である。超浅刺は大分の首藤博明の発案になるもので、これは見たことがあり、特訓中である。私は刺入に際して捻鍼をしないので、ちょっともたついている。散鍼についてはいろいろ流儀があり、私の流儀にもあるが、てい鍼を使ったもので、手先の技術はあまり必要がない(あえていうと皮膚を観察して弁証する感覚の鋭敏さが必要か)。

さて、南谷先生は目下の我々にも礼儀正しく好々爺って感じで、人格的にも学ぶことも多かったが、それよりも華麗な散鍼の手の動きにただただ圧倒された。特に押手の動きはヘビやウナギがくねくねと体を動かして水中を泳ぐような華麗な手さばきだ(たとえが悪いか?)。実技時間に「被検者になりたい人」と言われたときに手を挙げたら運良く指名された。ラッキー!散鍼を受けている時まず感じたのは、鍼が当たっている感覚がないこと。押手と刺手が別々なので鍼が皮膚に接触する感覚くらいあるだろうと思っていたが、全く感じない。もうひとつ感じたのは押手を移動させるときの心地よさである。リズミカルで気持がいい。他には押手をリズミカルに動かしているときにも気の往来を感じるようにとの説明をされたときには、はっと気づくものがあった。

さて今後の課題はこれをマネできるかってことである。幸いにして多賀フォーラムを主催している長野仁先生の唯掌論のDVDが販売されていたので買ってみた(販売は和方鍼灸友の会会員限定らしい)。散鍼の細かい訓練法が述べられている。こういうわかりやすくて体系だった指導方法のDVDってあまり見かけない。買う時に5000円は高いと思ったが、見てみるとこれまた「安すぎる!」と思った。これを半年くらい修練し、我々の流儀の訓練方法用にアレンジして組み入れてみよう。長野先生にはどんどん本を書いてもらいたい。

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