敗因2009/09/02

近代の超克
河上徹太郎・小林秀雄・西谷啓治他著
今日の読書
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8月の29日と30日は、高橋巌先生の『社会の未来』(シュタイナー著)の講義に参加した。高橋先生翻訳の『社会の未来』は20年ほど前に出版されていて、そのときに通読したがよく分からなかった。今回、6月と2回に分けて詳しい説明をお聞きしたが、やっぱりよくわからない。シュタイナーの社会論はとてもスピリチュアルな社会主義なのだが、国家の維持とシュタイナーのいう社会三層化運動がどう結びつくのかが、いちばんの分からない点だ。このことについては後日、書いてみよう。

講義で興味が湧いた話題その1

最近注目されているベーシック・インカムの思想的背景がシュタイナーの社会論にあるらしい。これはちょっと勉強しなければ。今回の衆院選で当選した田中康夫氏はこのべーシック・インカムを党の政策として挙げている。入門書を先日買ったのだがまだ読んでいない。

詳しい感想は少し勉強してからだが、こういう社会制度が成り立つ前提は富国強兵・自主独立なのではないか?先生の話や参加者の話を聞いていて、このこと(ようは安全保障問題)との関係についての言及がなく、安易すぎないかと感じた。


講義で興味が湧いた話題その2


もうひとつ興味をひいたのが大川周明とシュタイナーの社会論の関係。大川周明がシュタイナーの社会論を読んで非常に影響を受けた話は先生から何度かお聞きしたことがあるのだが、それをもとにした文章が残っていて大川周明全集に収録されているらしい。読みたくなったので大阪市立図書館と大阪府立図書館を検索したのだが、みあたらない。国会図書館の近代デジタルライブラリーに彼の著作が数点みつけられたが、該当するものがなかった。

大川周明はA級戦犯で裁判にかけられるも梅毒による精神障害で裁判から除かれたような右翼思想家だが、その彼がシュタイナーの社会論をどのように受容したのか非常に気にかかる。ウイキペディアの大川周明の項目には「その思想は、近代日本の西洋化に対決し、精神面では日本主義、内政面では社会主義もしくは統制経済、外交面ではアジア主義を唱道した。」と書いている。国体は天皇制・政体は社会主義・外交は多民族共生主義(五族共和?)というところか?ちょっと勉強してみないといけないなぁ。

余談だが、大川周明が関わっていた満鉄系の東亜経済調査局に、高橋先生の恩師の一人で以前にも書いた井筒俊彦先生がよばれて本を読みあさっていたそうで、浅からぬ因縁を感じる。

今回の衆院選で自民党が大敗したが、現在の保守運動に決定的に欠落しているのはこういう重厚な思想だと思う。従軍慰安婦・強制連行・南京大虐殺・竹島-尖閣諸島問題、中国の軍事大国化、アメリカの日本属国化政策・憲法改正・偏向教育等々どれも重要なテーマだけれども、もっとも根本的なことがかけている。それはこの日本がどうあるべきかの思想だろう。

 ・日本の国体はどうあるべきか。
 ・日本の国体にそった政体はどうあるべきか。
 ・その政体も未来に対してどう取り組んでいくべきか?
 
左翼運動が取り上げている貧困や格差社会問題・多民族-多文化共生・ジェンダー等々と安全保障など国家戦略のテーマをも取り込んだ重厚な保守思想だ。日本の伝統文化を破壊するといってただ反対するのではなく(それなら左翼運動家の反対と陰陽裏返しなだけだ)、取り込んだ思想が必要なのだと思う。日本の国体の根幹は神道の精神だが、神道にはそれを取り入れるだけの懐の広さがあると思う。でも、平成になってから、こういうことを取り上げた重厚な思想は出てきていないのではないか?

自民党大敗の根本的な原因は、未来に向けてのこういった重厚な保守思想を提起できていないところにあるんだと思う。

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