鍼(はり)治療後の急死事件について2010/01/16

大阪池田市にある鍼灸で、鍼灸治療による死亡事故が起こりました。
新聞やテレビで報道がありましたので、ご存じの方も多いと思います。鍼灸治療に不安を持たれる方も多いと思われますので、少し解説してみましょう。

はり治療後に女性急死 大阪府警、鍼灸院を家宅捜索 [産経新聞]

無免許の学生がはり治療 肺に傷つき死亡の女性 大阪 [朝日新聞]

まず、ほとんどの新聞では鍼灸院と書かれていますが、内部情報によりますと、実際は鍼灸整骨院のようです。屋号まで分かっていますが、治療と死因の因果関係がはっきりしないので書きません。

まず重要なのは施術者が柔道整復師の資格は持っているものの、鍼灸師の資格を持っていない鍼灸学校に通う学生であったということでしょう。鍼灸師の免許を持っていないと鍼灸治療をしてはいけないので、無資格治療だったということです。

次に重要なのは院長が「学生が無免許だと知っていたが、はり治療をしているとは知らなかった」と話している点でしょう。いっしょに働いていれば、気づかないはずないです。名前を貸しているだけとか、院長は出張治療中とかなら、気づかないということもありえますけど、治療院にいないのに治療させているという点で違反です。

さらに、女性の肺に複数の傷があり、背中に刺した鍼が肺まで届いたという点です。こういうのを専門的には気胸といいます。治療によって肺に穴を開けてしまう医療過誤がたまに起こりますが、きちんとした知識があれば起こるはずないです。鍼治療で一番起こしやすい重篤な医療過誤は気胸なので、鍼灸学校ではかならず教育します(しないとすれば、かなり問題がある学校です)。下記のような教科書的な書物がいくつか出版されているので、学生は学校で買わされているはずです。

さて、ここからは私の想像ですが、背中に複数の鍼を刺し、通電していたのではないかと思います。パルス治療というのですが、家庭用の低周波治療器を鍼に応用したものと考えておけばいいでしょう。パルス治療では筋肉が収縮・弛緩を繰り返しますので、鍼の深さが変わることがよくあります。鍼の深さや指す方向をよく考えないと、肺に刺さるまで動くという可能性は大いにあります。過誤を起こした施術者は学生ですので、このあたりのことをよく知らなかった・・・という感じじゃないでしょうか?今後の報道に注意しておきたい点です。

いずれにしても、違法かつ、あまりにもレベルの低い施術です少なくとも、鍼灸専業の治療院なら絶対にありえない医療過誤です。とはいえ無資格施術は鍼灸整骨院では結構行われています。私もちょくちょく耳にします。

最後に。裁判で損害賠償を請求されますが、かなり高額になるでしょう。最低でも3000万はいくんじゃないでしょうか?無資格治療なので、治療院が入っている損害賠償責任保険は支給されません。そうすると、施術者と治療院で被害者遺族に払っていくことになります。それから、施術者は無資格治療で死亡事故を起こしたので、柔道整復師の資格を剥奪される可能性もあります。実刑じゃないでしょうか。治療院も閉院でしょう。



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