お灸の適応症~名家灸選釈義から~

 

昭和前半くらいまではお灸治療専門の治療院がたくさんありましたが、
だんだん廃れていって、現在ではほとんど残っていません。
鍼灸師も昔ほどお灸をしなくなってしまいました。

特に痕が残るようなお灸は患者さんも施術者も避けるようになってきました。
しかし昔はお灸で実にたくさんの病気を治していました。
昔の人は、お灸でいったいどのような病気を治していたのでしょうか?

ここでは「名家灸選釈義」という書物を取り上げましょう。
「名家灸選釈義」は江戸時代に書かれた
名家灸選」という漢文で書かれた書物を、
昭和の名灸師と呼ばれていた深谷伊三郎先生が翻訳し、
解説をつけたものです。

江戸時代は日本独自の鍼灸がとても発達した時代です。
日本人は昔から手先が器用で、どんな分野でも改良が上手な民族です。
それは鍼灸の分野でも同じです。
江戸の末期には鍼灸の本場である中国を上回る技術を開発していました。
古典文献学的もトップレベルの状況でしたが、古典研究と独自の技術を融合させて、
レベルの高い書物がいくつも書かれました。その中にはお灸の専門書もいくつかあります。

「名家灸選」は文化二年(1805年)に越後守、和気惟亨(わけのこれゆき)が第一巻を著し、
二年後に同志だった平井庸信(ひらいようしん)が第二巻を編著したものです。

内容は民間に伝承されてきた秘法あるいは名灸として賞賛されているものを集め、
それに古典の中から灸治療に関する部分を集めて編集したものです。
今風にいえば「ベッドサイドの灸治療穴集」でしょうか。

深谷伊三郎先生

「名家灸選釈義」を表した深谷伊三郎先生は業界に名をとどろかせた昭和の名鍼灸師です。
毎日たくさんの患者さんを治療し、たくさんの書物を書き、
多くの弟子を育てた名実ともに偉大な先生でした。
代表作に「お灸で病気を治した話(全十集)」「名家灸選釈義」「灸法医典」があります。

お灸の適応症(「名家灸選」より)

では、以下に『名家灸選釈義』に記されている病気を適当に挙げてみましょう。

  • 内科:嚥下困難・頭痛・めまい・咽痛(のどの痛み)・しゃっくり・喘息慢性気管支炎・腹痛・下腹部痛・胃酸過多・慢性胃炎・中毒性胃炎・尿失禁・大便失禁・下痢・便秘・貧尿・むくみ・黄疸・痔・脱肛・脚気・
  • 外科・整形外科:腰痛・背部痛・ヘルニア
  • 精神科・脳血管障害:癲癇・うつ病・統合失調症(分裂症)・脳出血・言語障害・脳梗塞・中風
  • 産婦人科/男科:不正出血・不妊症・性病・生理不順・乳腺炎・帯下(おりもの)・乳腺炎・子宮下垂(子宮脱)・睾丸炎・外陰部掻痒症・夢精・避妊
  • 小児科:かんむし・引きつけ・小児の虚弱体質・夜尿症
  • 五官科:眼病・鼻疾患・歯痛・・鼻血
  • 感染症:チフス・マラリア・おでき・結核
  • その他
  • わきが・夏ばて・寝冷え

ずいぶんたくさんありますね。
他のお灸の専門書なども加えると、われわれが町の内科医に診ていただく病気のほとんどが含まれていることに気づきます。
昔は漢方薬と鍼灸が医療の中心だったので当然です。
ただ現在では、医師の治療を受けた方が早く・安く解決する疾患がいくつもありますし、
逆に昔にはないような病気で西洋医学では対応が難しい疾患もありますので、
お灸治療の適応症というのは面白い問題をたくさん抱えていると思います。


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